カブトビールとシベリヤ

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

夏に宮崎駿さんの「風立ちぬ」を観てきたのだが、もともと飛行機好きであるのと、今回の映画の主な舞台である愛知県にもゆかりのある自分であることから、つい細かな部分まで見入ってしまった。

その中で名古屋駅前の風景が出てくるのだが、ここにドーンと出てくるのが「カブトビール」の看板。
おおっと心が動いた。というのも、カブトビールの存在を知っていたからだ。

カブトビールについては検索いただければ詳しく出てくるので特に説明しないけれど、要はかつて存在したビールで、愛知県半田市で作られていたことから、東海地区では最もよく飲まれていたブランドであったのだと思う。

実は、自分自身この「カブトビール」を見たことがある。
だが、リアルタイムで「飲んだ」訳ではない。カブトビールは昭和18年に製造を終了してしまったのだから。当時のものを飲んだ人はもう85歳以上の人だろう。
僕が「見た」のは箱に入った大量の空き瓶。つまり、僕の亡くなった祖父や伯父さんたちが愛飲家だったのだろうが、子供の頃、伯父さんの家へ行ったとき大量のカブトビールの瓶が木箱に入れたまま土間に何箱も積み上げてあったのだった。
その時は、珍しいビールの瓶だと思って、何本か持って帰りたいと思ったのだが(当時から蒐集癖があった)、「そんなもの持っていくな」と今は亡くなった実父に言われて、泣く泣くあきらめた。
伯父さんの話では、強いビールで1本飲んだだけで今のビール2~3本くらい酔えたな、とか、濃くて旨いビールだった、というのを聞いた覚えがある。

しかしよくよく考えたら製造終了から30年以上経っていた時代の訳で、よっぽど忘れられなくて瓶を持っていたのか?、皆亡くなってしまったことから、いまでは謎のままだ。

いずれにしても、このカブトビール。映画に出てきたことで思わぬ脚光を浴びることとなった。
先日たまたま新聞を見ていたら、「風立ちぬ」関連の記事で、カブトビールの話題が出ていた。そして復刻版のカブトビールがあることも知り、詳しく調べてみると、昔の工場が今も現存しており、耐震補強など改修工事前の最後の一般公開で、復刻版カブトビールの販売が行われることを発見した。

「これは行かねばなるまい。」

たまたまデルタを車検に出しに行く用事があったので、ついでに足を延ばして行ってみることにした。

果たして、カブトビールの工場は、立派な赤煉瓦の建物で、「風立ちぬ」の影響からか、ものすごい数の観光客が押し寄せていた。
役場の人が、「今日はビールは約1時間くらいで終わってしまうと思います」と言っている。

10時からの公開だったが、1時間前くらいに着いたので、僕の前には100人くらい。なんとかビールは手に入りそうだ。

入場すると皆まずビールの確保に走っている。今日は一人2本まで。僕も2本購入した。現地で飲む分は別なので、お金さえ出せば何本でも飲めるのだが、今日は車なので飲む訳にはいかない。ちょっと残念だった。

風立ちぬ」にも出てきた「シベリヤ」も売っていたので即購入。こちらは数が置いてなかったので、僕の2人後で終了だった。あぶなかった。

ビールを確保した後で改めて中の展示を詳しく見た。「風立ちぬ」の名古屋駅前の風景の基となった写真も展示されていたりして、皆記念写真を撮っていたりしていた。

僕は赤煉瓦の建物自体に興味があったので、あちこちを詳しく見てみた。
外壁に残った米軍艦載機の機銃掃射の跡などが生々しい。
イギリス積みの煉瓦で出来た壁は時代を感じさせる。煉瓦自体も焼き色が違い個体差が多く、それがまた微妙なグラデーションで味わいがある。
最近では東京駅の煉瓦(というかタイルか?)壁の再生の話題があったが、綺麗になりすぎてしまった気がする。
この赤レンガ建物も、現状の雰囲気を残したまま保存してもらいたいものだ。

さて、家に帰って飲んでみた感想は、「あー確かに強い」。
裏ラベルを見るとアルコール度数は7%もある。昭和40年代のビール2~3本というのも頷ける。当時はまだドライがなくてアルコール度数は4%くらいだったからね。
色も濃くて赤褐色。味わいは黒ビールに近い甘さがあり炭酸は弱め。全体的なイメージとしては、琥珀エビスとエビス黒をハーフにして麦焼酎を足した感じ。個人的には好きな味だ。

また機会があれば飲んでみたい。